お知らせ

湯浅年子―エッフェル塔に刻まれる日本女性科学者

川島慶子会員より,フランスで活躍した日本人物理学者・湯浅年子(1909-1980)の名がエッフェル塔に刻まれるというニュースが寄せられ,それに関連する文章を執筆して頂きました。ここに掲載します。(2026.2.5,事務局)

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湯浅年子―エッフェル塔に刻まれる日本女性科学者

川島慶子(名古屋工業大学名誉教授)

「ユアサの名前がエッフェル塔に刻まれるよ。」フランス化学史クラブからのメールの意味が最初は全然わからなかった。そもそも私はエッフェル塔に、フランス革命から100年の間に活躍した72名の男性科学者の名が、一階部分(日本式では二階)にぐるりと刻まれていることを知らなかったからである。これは設計者のギュスターヴ・エッフェル(Alexandre Gustave Eiffel, 1832-1923)による、「科学と技術の殿堂」を象徴する行為であり、塔の建設時の1889年当時には「自由・平等・友愛」を謳うフランス革命100年を記念した巨大建造物である「鉄の貴婦人」にふさわしい、フランスの偉大な科学的知性を世界に示す装飾だった。

 ただ、この「貴婦人」の周囲を囲むのは「騎士」のみであり、そこにはただ一人の女性の名も記されていなかった(ウィキペディア)。

 2026年1月26日、エッフェル塔の建設のための最初の楔がパリのこの地に撃ち込まれた記念日に、パリ市長アンヌ・イダルゴ(Anne Hidargo)がついにこの「伝統」を打ち砕いた。この日、イダルゴは、科学・技術・数学分野における男女の平等性を明確に示すべく、18世紀から今日までにこの分野で活躍した、やはり72名の女性の名前を、男性名のすぐ上に、男性同様、黄金の文字で刻むことを世界に宣言したのである。主導したのはパリ市だが、実際に動いたのは「女性と科学連合(l’assosiation Femme & Sciences)」、「エッフェル塔開発協会(la Société d’exploitation de la Tour Eiffel)」とそこが組織した特別委員会である。

 72名を選ぶのは容易ではなかったろう。実は私も「なぜあの人がいて、この人がいないのか」と思うことはある。しかしそれ以上に男女同数にしたことの意味は大きい。そして、エッフェルの時代とのもう一つの違いは、フランス人男性だけが並んでいる名前の上に、帰化もしていない外国人の湯浅年子の名を刻むと委員会が決めたことである。日本最初の女性物理学者。実際の研究拠点はフランスだったが、常にパリから日本の科学の発展、特に女性科学者の養成に心を配り、日本のキュリー夫人と呼ばれた女性。「最後まで徹底的に」をモットーに、死の直前まで入院を拒み、日仏文化交流、とくに科学交流に力を注いだ。

 現実にはフランスでも、科学分野に占める女性割合は明らかに少ない。科学史で使われる表現、女性の貢献が見えなくなる「マチルダ効果」のせいもあるし、科学の現場に到着する以前に消された希望も多々あるだろう。だから「男女同数」というのは、見果てぬ革命の理想であると同時に、明日への希望でもある。イダルゴは語る。少女たちは金色に輝く、男性と同数の女性科学者たちの名前を鉄の貴婦人の上に見出す時、自分たちの未来がそこにあることを知り、少年たちは科学は両性のものだと実感するだろう、と。今回選ばれた外国人は湯浅だけではないが、唯一のアジア人女性の名が燦然と輝く時、子供たちは感じるだろう。科学には性も人種や民族も関係ないのだと。エッフェルの夢は成長し続けるのである。

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参考:72名の女性科学者を紹介するパンフレット(事務局)

第17回化学遺産認定と第19回化学遺産市民公開講座(2026)

日本化学会で行われている化学遺産認定とそれに関連する市民公開講座の情報を掲載します。これらの事業には化学史学会も協力しています。(事務局)

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第17回化学遺産認定

認定化学遺産 第073号 直火真空蒸留釜(通称:地球釜)
          (所 蔵:大八化学工業株式会社 大阪技術開発センター)

認定化学遺産 第074号 世界に先駆けた溶媒循環型分取GPC装置
          (所 蔵:日本分析工業株式会社)

認定化学遺産 第075号 北海道大学総合博物館所蔵のチセリウス電気泳動装置
          (所 蔵:北海道大学総合博物館)

プレスリリース https://www.chemistry.or.jp/news/information/173.html

リーフレット https://www.chemistry.or.jp/news/dai17-leaflet.pdf

第19回化学遺産市民公開講座

日時:2026年4月4日 (土) 13:30 – 16:00

会場:ハイブリッド開催 現地会場:化学会館/オンライン:Zoom

対象:どなたでもご参加いただけます

参加費:無料

日本化学会主催、化学史学会共催

プログラム

13:35-14:15 直火真空蒸留釜(通称:地球釜)

         中村伸氏(大八化学工業株式会社 取締役 生産部門担当)

14:25-15:05 世界に先駆けた溶媒循環型分取GPC装置

         大栗直毅氏(日本分析工業株式会社 代表取締役)

15:15-15:55 北海道大学総合博物館所蔵のチセリウス電気泳動装置

         三浦賢司氏(防衛医科大学校・再生発生学講座/共同利用研究施設 講師)

申し込み

https://dai19-kagakuisan.peatix.com

「日本版 Ask the Historian」のご案内

化学史学会理事・遠藤瑞己氏は、化学教育における歴史に関する質問を受け付け、調査・回答を行う取り組み日本版 Ask the Historian」を実施しています(注1)。
本プロジェクトは、中学校・高等学校の化学教師を中心とする日本基礎化学教育学会にて、2024年1月に開始されたものです。

化学史学会は、この活動を後援し、本ウェブサイト上に質問投稿用フォームを掲載しています。
化学に関する用語・反応・概念などの歴史に関して調べてほしいことがありましたら、下記リンクよりご投稿ください。
メールアドレスをご記入いただいた場合は、調査結果をメールにてお知らせいたします(注2)。

質問投稿フォーム(Googleフォーム)
https://docs.google.com/forms/d/1uftVtoA2xfALQJaV9nGYU6GsPfCspVdBEJOkojykg30/viewform?edit_requested=true

注1)本プロジェクトの原型であるAsk the Historianは、化学史家ウィリアム・ジェンセン(William Barry Jensen, 1948–2024)がアメリカ化学会のJournal of Chemical Education誌上で2003年から2011年にかけて行っていた取り組みです。

注2)「日本版 Ask the Historian」の調査結果・回答内容は、遠藤瑞己氏による調査に基づくものです。なお、調査内容は別媒体で公表される場合がございますので、あらかじめご了承いただけますと幸いです。

杏雨書屋特別展示会・研究講演会(2025.10)

本学会賛助会員の武田科学振興財団から杏雨書屋の展示会・講演会の案内が届きましたので,ご紹介します。(事務局) 続きを読む »

2026年度年会シンポジウム「化学史研究の半世紀:回顧と展望」講演者募集(最終回)

 本学会創立50周年記念事業の一つとして2022年度年会から4年間連続で開催してきましたシンポジウム「化学史研究の半世紀:回顧と展望」ですが、来年度を最終回といたします。このシンポジウムでの講演を希望される方は、2025年12月末までに学会事務局へお知らせください。

(世話人:大野誠)

参考:このシンポジウムの趣旨については,こちらのアナウンスをご参照ください。(事務局)

第6回学会賞

2024年9月7日(土)、2024年度化学史学会総会において、河野洋人会員に第6回学会賞(論文賞)が授与されました。

学術賞

該当なし

論文賞

河野洋人「『物性論』の出現とその学説史的定位」『化学史研究』第 49 巻(2022):157–185

選考過程

 学会誌『化学史研究』2020年から2023年(170号から185号)に掲載されたものから,編集委員会より29本が候補として認められ,22名の評議員(全28名中,6人は候補者のため投票権なし)に審査が求められた。回答があったのは13名(全14回答中、1回答は無効)で,論文「『物性論』の出現とその学説史的定位」 (河野洋人)(181号・2022年)が最高得点を集め,選ばれた。

特別賞

該当なし

2025年度 通常総会 議題および委任状フォーム

2025年度化学史学会通常総会の議題を掲載します通常総会に出席できない会員の方は,委任状を提出していただきたくお願い申し上げます。(事務局) 続きを読む »

2025度年会 一般講演およびシンポジウム発表者への連絡事項

2025度年会 一般講演およびシンポジウム発表者のみなさまへ発表に関する事項をお知らせします。(年会準備委員会) 続きを読む »

IUPAC原子量委員会2025日本開催記念シンポジウム

遠藤瑞己理事より,IUPAC原子量委員会2025日本開催記念シンポジウムの情報を頂きましたので,会員のみなさまにお知らせいたします。(事務局)

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【日本開催記念シンポジウム】
今年の9月1-5日にIUPACの原子量委員会を日本で初めて開催致します。この会議では、関連分野の世界の研究者20人程度が2年に1度集まり、最新の研究成果に基づき各元素の同位体比の妥当な値を議論した上で、それによる原子量の決定を行います。それは最終的に日本化学会原子量専門委員会が毎年出している原子量表にも反映されます。
基本的にこの会議自体は委員のみで行いますが、この会議の日本開催を記念して、9月5日(金)の午後に、この委員会の活動と、それに関連した講演を含むシンポジウムを企画しました。参加は無料で、会場は東大本郷キャンパスを予定しております。どなたでも参加可能ですので、是非ご参加頂けましたら幸いです。どうぞよろしくお願い致します。
講演会のプログラムは以下を予定しております。講演は英語ですが、Zoom利用の日本語訳および日本語での解説を付ける予定です。

【IUPAC原子量委員会2025日本開催記念シンポジウム】
日時:2025年9月5日(金) 13:30~15:40
場所:東京大学本郷キャンパス 理学部化学本館5階講堂https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_06_07_j.html

【追加情報】希望が多かったリモート接続も準備しました(https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/88111361312)。

【プログラム】
13:30-13:50:
Johanna Irrgeher (Montanuniversität Leoben, Austria)、IUPAC Commission on Isotopic Abundances and Atomic Weights (CIAAW)(IUPAC原子量委員会の歴史と役割)
13:50-14:20:
Philip Dunn (LGC Limited, UK) and Manfred Gröning (IAEA, Austria)、Recent Activities of IUPAC-CIAAW(IUPAC原子量委員会の最近の活動)
14:40-15:10:
遠藤 瑞己 (武蔵大学)、The Discovery of Np (Nipponium) in the History of Chemistry(化学史におけるニッポニウム(Np)の発見)
15:10-15:40:
羽場宏光(理化学研究所)、Nihonium and the Challenges of Expanding the Periodic Table(ニホニウム(Nh)と周期表拡大への挑戦)

https://iupac.org/event/ciaaw-2025-symposium/
http://www-gbs.eps.s.u-tokyo.ac.jp/~environ/CIAAW.pdf

2025年度(第57回)研究助成「倉田奨励金」募集概要

公益財団法人日立財団より,研究助成の募集案内が届きましたので,会員のみなさまにお知らせいたします。(事務局)

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2025年度(第57回)研究助成「倉田奨励金」募集概要
募集期間:2025年7月1日〜9月16日

自然科学・工学研究部門(省略)

人文・社会科学研究部門:
科学技術の進歩がもたらす社会の変容、その背景に潜む複合的な諸問題を人文・社会科学の視点(社会、文学、歴史、哲学、倫理、法制度、経済学、心理学、文化・芸術等)から読み解き、科学技術の発展の意味や価値と社会のあり方を探求する研究。

助成金額:100万円程度/件

詳しくは,ウェブサイトをご覧ください。
https://www.hitachi-zaidan.org/activities/kurata/index.html

人文・社会科学研究部門募集要項:
https://www.hitachi-zaidan.org/activities/kurata/data/S_ApplicationGuidelines_fy2025.pdf