第1回学会賞

2004年、以下の方々に第1回学会賞が授与されました。

学術賞

古川安会員 Inventing Polymer Science: Staudinger, Carothers, and the Emergence of Macromolecular Chemistry (Philadelphia: University of Pennsylvania Press, 1998)

論文賞

菊池好行会員「『舎密便覧』の原著者ヘンドリク・クラーメル・ホメス——オランダにおける化学実験操作の図表化の社会的背景」『化学史研究』第27巻(2000): 129-155

特別賞

該当なし

 

詳細は、会誌第31巻第2号(2004.6)掲載の会告(161頁)に掲載されていますが、以下に転載します。さらに、年会で行われた受賞者による記念講演の情報も付記します。

学術賞

古川安会員 Inventing Polymer Science: Staudinger, Carothers, and the Emergence of Macromolecular Chemistry (Philadelphia: University of Pennsylvania Press, 1998)

選考過程

 2003年8月末の締め切りまでに、2名の会員から上記の古川会員の作品に対する推薦書が事務局に送られてきた。推薦された作品はこれのみであった。9月27日に開催された理事会でこの2通の推薦書を正式に受理し、学会の内規に従って候補作の授与資格を検討し、これが満たされていることを確認して、審査委員会をつくった。協議の結果、この委員会の構成を次の通りとすることに決定した。

   理事会からの審査委員:大野誠、梶雅範、亀山哲也
   理事会委嘱の審査委員:江崎正直、山口達明

 その後、書面による審議で委員長を亀山哲也氏とすること、および審査手順を決定した。後者については、各審査委員が候補作を読んで、審査結果を10月末までに委員長に報告することになった。委員の判断が分かれた場合は、次回の理事会の際に委員会を開催して協議することも合意された。各委員の審査結果は、10月中旬までに委員長に報告されたが、全員一致でこの候補作に本学会初の学術賞を授与することを決定した。この決定は、審査報告書を添えて、2004年3月6日開催の理事会で報告・了承された。 

授賞理由

 今回の審査対象となった古川会員の作品は、20世紀科学史の重要なテーマの一つである高分子科学の形成について論じた研究書である。この領域に関わるこれまでの研究成果を十分に摂取した上でそれらを批判的に吟味し、高分子科学の形成にあたって主導的な役割を果たしたシュタウディンガーとカローザスを中心として、彼らが関係した学術組織、企業、人物などについても、印刷文書はもとより、可能な限り手稿史料をも検討し、場合によっては関係者へのインタヴューを実施して、独自の理解を示している。高分子科学の学説の動向のみならず、ナチズムや企業戦略との関係など社会的な側面についても説得的に論が展開されている。一言でいえば、国際的な水準に達した作品であり、本学会の学術賞に値する。

記念講演

 2005年度年会において、古川会員による記念講演「高分子化学史とともに」が行われた。その要旨は、会誌第32巻(2005) 133-134頁に掲載されている。

論文賞

菊池好行会員「『舎密便覧』の原著者ヘンドリク・クラーメル・ホメス——オランダにおける化学実験操作の図表化の社会的背景」『化学史研究』第27巻(2000): 129-155

選考過程

 2003年第4号が発刊された後、過去4年間の本誌の「論文」欄に掲載された8論文に、編集委員会が候補作とすることを推薦した5論文を加えた審査用紙を事務局が作成し、2004年2月初旬にそれを評議員に郵送した。審査用紙の返送期限は3月末とした。

 評議員(25名)から返送されてきた審査用紙は20通(審査辞退の申し出3名、無返送2名)で、候補作1編を選び第1位に5点、第2位に3点、第3位に1点を与えるという点数方式で審査を行った。その集計結果は次のようになった。

   第1位(40点) 菊池好行会員 上記論文
   第2位(30点) 吉原賢二会員 「小川正孝と弟子たち——白金続元素とX線分光」
                  (『本誌』通巻第103号(2003年): 69-83)

記念講演

 2007年度年会において、菊池会員による記念講演「日英化学交流史研究に取り組んで」が行われた。その要旨は、会誌第34巻(2007) 105-106頁に掲載されている。